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時代が求めるのは「仁者」か「詩人」か
数日前から寝る前に『三国志』(吉川英治著・全8巻)を読んでいます。
初めて読んだのが中学1年だったでしょうか?
社会人になってからも2~3年に1度読み返したくなる名著です。

今、第3巻です。
漢王朝が完全に衰退し、群雄割拠の世の中で
巧みな戦略と政治力を武器に台頭してきた『曹操』
王朝の血を引き、類まれなる人徳で慕われる『劉備』
2人の英雄を中心にストーリーが進んでいます。

子供のころは、
運に恵まれず1国の領地も守ることができない劉備にヤキモキし、
時流を得て国土を拡大し続ける曹操を小憎らしく思っていました。

しかし、この年齢になって読むと
『曹操』という人物は非常に興味深いのです!

彼は基本的には“戦略家”です。
ところが『策士、策に溺れる』の言葉もあるように
何度も自分の立てた戦略が失敗して、命の危機に晒されます。
国土だけでなく大切な部下まで失ってしまいます。
しかし彼はめげずに何度も再起を図り、その都度勢力を拡大します。

「折れない心」と「周囲を奮い立たせる力」
この2つがまず非常に印象的です。

もう1つ子供心に思っていたこと。
どうして曹操のところにはたくさんの人材がいるのに
劉備のところには関羽・張飛しかいないんだろう・・・?

曹操のもとに優秀な武将・軍師・政治家がたくさんやってくる背景。
大人になって読むと分かるんですね。

例えば行軍の道すがら、自分が一敗地にまみれた場所にやってくると
曹操は亡くなった部下を思い、胸を打つような言葉を発し、
時に慟哭し、供養の儀まで開いてあげます。


あるいはこんな記述。ある戦の場面です。

「許猪、許猪っ」

曹操は中軍にあって「行け、見えるか、あの敵だぞ」と、指さした。
「はっ」と、許猪は、飼い主の拳を離れた鷹のように馬煙りをたてて翔け向った。
(中略)
許猪は、曹操の前に二つの首を並べ、
「これでしたか」と、庭前の落柿でも拾って来たような顔をして云った。
曹操は、許猪の背を叩いて、

「これだこれだ。そちはまさに当世の樊噲(はんかい)だ。
樊噲の化身を見るようだ」

と、褒めたたえた。(注釈:樊噲は前漢時代の勇猛な武将)

許猪は、元来、田夫から身を起して間もない人物なので、
あまりの晴れがましさに、「そ、そんなでも、ありません」と
顔を紅くしながら諸将の間へかくれこんだ。
その容子がおかしかったか、曹操は、今たけなわの戦もよそに、
「あははは、可愛い奴じゃ。ははは」と哄笑していた。

そういう光景を見ていると、諸将は皆、自分も生涯に一度は
曹操の手で背中を叩かれてみたいという気持を起した。
(第二巻、257ページより引用)


何だか微笑ましくなるじゃありませんか。

吉川英治は文中で曹操を“詩人”と称していますが
彼を支えているのはまさしく「言葉の力」だと思います。
一方の劉備に備わっているのは「仁」の心。
巧言令色少なし仁』まさに君子の心得を体現しています。
もちろんそれが悪いとは言いませんが、どうも力強さに欠けるような・・・。

「ビジョンの提示」「モチベーションの高揚」
何よりも「明るい未来と希望を人々に抱かせること」

これらはリーダーが果たすべき大きな役割です。
政治で言えば小泉総一郎のテレビポリティクスにも近いのですが
曹操を天下の覇者たらしめたのは
現代的なリーダーシップそのものだったのではないか?
と感じます。


ひるがえって、ポスト福田首相選びに思いを馳せると
国民は、そして時代は
「仁者」「詩人」どちらに未来を託すのだろうか・・・?
とそんなことが気になります。


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【2008/09/05 21:30】 | 中国古典のおへや | トラックバック(0) | コメント(0) 
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